知られざる日本国憲法の正体

マッカーサーはなぜ「帝国憲法」を改正したのか

吉本 貞昭 著 2014.04.30 発行
ISBN 978-4-89295-973-8 C0021 四六上製 440ページ 定価 2268円(本体 2100円)


「私の伯父にあたるマッカーサー元帥ですが、彼の日本占領政策は根本から間違っておりました。どうか一日もはやくGHQの押しつけ憲法を捨てて、日本の歴史と伝統に合った憲法を制定して昔の姿に回復してください」
――ダグラス・マッカーサー二世(駐日米国大使)


日本人が戦後、失われた自信と誇りを取り戻すために、まずやらなければならないことは、 自らの手で日本民族の精神を基礎とする自主憲法を制定し、真の主権を回復することである。 そこから、本当の戦後が始まっていくからである。その上で、日本がこれから行くべき方向が 自ずと決まってくるであろう。


内容紹介

知られざる日本国憲法の正体―マッカーサーはなぜ帝国憲法を改正したのか

平成二十四年十二月十六日、第四十六回衆議院議員総選挙で自民党が二九四議席を獲得して圧勝し、二十六日に第二次安倍政権が誕生した。既に、自民党の憲法改正推進本部は四月二十八日に、「日本国憲法改正草案」(全一一〇カ条)を発表しており、安倍首相も、十七日の記者会見で

「最初に行うことは九十六条改正だろう。三分の一超の国会議員が反対すれば議論すらできない。あまりにもハードルが高すぎる」

と述べ、第九十六条の改正に意欲を燃やした。

保守政党の自由党によって本格的に憲法改正の議論が始まったのは、昭和二十七年四月二十八日に、日本が主権を回復するとともに、日米安全保障条約が発効されてから二年後の昭和二十九年三月十二日であった。それ以来、紆余曲折の憲法論議を経て、ようやくわが国の国会やマスコミで本格的に憲法改正が議論されるようになってきたのであるが、「日本国憲法」が六十六年間にわたって一度も改正されてこなかったのは、第九十六条の第一項にあるように、他国と比べて憲法の改正手続が極めて難しいことにあったことは間違いないだろう。

では、「日本国憲法」の真の起草者である占領軍は、なぜ改正要件のハードルを高くして「日本国憲法」を硬性憲法にしたのだろうか。その思惑も考えずに、他国の憲法の改正要件と「日本国憲法」の改正要件とを、ただ比較してみたところで、あまり意味がないと思うのである。

一般に、法令解釈の基本原則の第一は、その法令の文章について文理解釈を行うことであるが、それによって定義がはっきりしない場合は、条理解釈か、それとも制定者の意図を明らかにすることになっている。

このことから、第九条の解釈でも、その定義がはっきりしない場合は、その提案者の意図を明らかにしなければ、第九条の意味を誤って理解することになるし、改正してもいいものかどうか判断に苦しむことになる。

その意味から第九十六条の解釈も、この条項の提案者の意図を明らかにしなければ、第九条と同じように、その意味を誤解して改正してもいいものかどうか判断に苦しむことになるのは間違いない。

ところが、わが国の戦後の憲法学会における憲法研究では、もっぱら日本国憲法の文理解釈に重点が置かれ、「日本国憲法」の形成過程と、その合法性の問題については完全に無視あるいは軽視されてきたのである。

名著と言われている「日本国憲法」の著作の中でも、これらの問題を深く論じているものは、ほとんどといっていいほど存在しないのである。

日本の保守政党や保守論陣においても、単なる「憲法改正」に重点が置かれ、この憲法の本質に関する検討がなおざりにされてきたため、わが国において「日本国憲法」の合法性と、その本質についての真相を知る日本人は、ほとんど皆無に等しい状態であると言ってもいいだろう。

そこで、本書の第一の課題は、まずアメリカの対日占領政策の目的がどこにあったのかを分析した上で、アメリカは、なぜ憲法改正を行ったのかを解明することにある。

アメリカは昭和十九年十二月に、「国務・陸軍・海軍三省調整委員会」(以下、SWNCCと略称)を設置して、戦後の対日占領政策を計画したが、その下部組織の特別調査部(SR)極東課のメンバーは、ソ連のスパイの影響を受けて「日本国憲法」のもとになる「SWNCC二二八」を作成しているのである。

第二は、「日本国憲法」が一体どのような手続を経て制定されたのかを解明すると同時に、占領軍による検閲がある中で、なぜ憲法改正を自由に批判できたのか、そして占領末期に、なぜ「日本国憲法」誕生の秘密が公表されたのかを解明することにある。

占領中、総司令部は、「日本国憲法」を批判する報道に対して厳しく検閲を行ったかのように思われているが、昭和二十一年六月八日まで、マッカーサーが「日本国憲法」の起草に果たした役割や、それに対する一切の批判以外は、自由に「日本国憲法」を批判することもできたし、占領末期には報道機関にマッカーサーが「日本国憲法」の起草に果たした役割を報じることを許可しているのである。

第三は、占領軍の押しつけた第九条の正体を解明することにある。現在、普天間基地の移設問題で、日米安全保障の危機が叫ばれているが、そもそも安全保障の問題も、「日本国憲法」第九条の矛盾から生じた現象であって、この第九条の真の意味を見つめ直さない限り、日本は真の自主防衛を取り戻すことはできないからである。

戦後の保守論者の間では、占領軍は、日本を弱腰国家にさせるために第九条を押しつけたと考えられているが、実は、占領軍は天皇制の廃止を叫ぶ極東委員会の批判を回避するために、第九条を第一条(天皇条項)とともに日本に押しつけたのが真相である。

第四は、昭和二十年八月十五日に、日本が降伏すると、占領軍は、日本政府に対して「大日本帝国憲法」(以下、「帝国憲法」と略称)に対する根本的な変革を迫ってきたが、それは、果たして当時の国際法や「ポツダム宣言」に従って合法的に行われたものなのかどうかを解明することにある。

本来、占領軍には、占領地の法律の順守を定めた「ハーグ陸戦法規」第四十三条に従って占領を行う義務があり、憲法を含めて他国の法律を変更する権限はないのである。

また「ポツダム宣言」の第十二項には「日本国国民の自由に表明せる意思に従い」と書かれており、アメリカ政府にも憲法改正を強制する権限はないのである。

第五は、「日本国憲法」を作ったニュー・ディラーの正体を解明すると同時に、「日本国憲法」に内在する政治思想を解明することにある。

実は、「日本国憲法」を作った総司令部民政局には、数多くのニュー・ディラーたちが巣くっており、彼らは自分たちの理想とする憲法を占領国の日本で実現しようとしたのであるが、「日本国憲法」からは、できるだけ日本的な思想を排除し、西欧諸国の革命思想を植えつけようとしたのである。

第六は、戦後の日本において憲法改正がなぜ行われてこなかったのかを究明すると同時に、日本国憲法の改正すべき点を解明することにある。

「日本国憲法」が昭和二十二年五月三日に施行されてから、来年で六十七年目の年を迎えることになる。以来、「日本国憲法」第九条をはじめとする条理解釈や改正の論議が半世紀以上にわたって繰り返し行われてきたわけであるが、これまで一度も改正されてこなかったのは、他国と比べて改正手続が極めて難しいことの他に、日本人は、経済の拡大を優先して占領軍の作った社会構造と「日本国憲法」の問題から目をそむけ、「国のあり方」という基本的な問題を考えてこなかったことや、欧米人とは違って憲法を「不磨の大典」であると考える傾向が強かったことに原因があると思うのである。

日本人が戦後、失われた自信と誇りを取り戻すために、まずやらなければならないことは、これらの意識を改革して自らの手で日本民族の精神を基礎とする自主憲法を制定し、真の主権を回復することであると思うのである。そこから、本当の戦後が始まっていくからである。その上で、日本がこれから行くべき方向が自ずと決まってくるであろう。

本書が戦後、占領軍の押しつけた憲法を改正する議論に拍車をかけるための一助となれば幸いである。





目次

はじめに

第一部 知られざる対日占領政策の舞台裏

第一章 アメリカの対日占領政策はこうして始まった
 第一節 アメリカの対日占領政策の意図はどこにあったのか
 第二節 マッカーサーはどのように日本を改造しようとしたのか

第二章 アメリカはなぜ「憲法改正」を行ったのか
 第一節 アメリカはどのように日本を理解していたのか
 第二節 アメリカの対日占領政策の背景には何があったのか

第二部 知られざる「日本国憲法」誕生の舞台裏

第三章 「帝国憲法」の改正はこうして始まった
 第一節 「帝国憲法」の改正はどのように行われたのか
 第二節 「マッカーサー草案」はどのように作成されたのか
 第三節 「マッカーサー草案」はどのように押しつけられたのか
 第四節 「日本国憲法」はどのように作成されたのか

第四章 枢密院・帝国議会での憲法審議はこうして始まった
 第一節 枢密院ではどのように憲法を審議したのか
 第二節 衆議院ではどのように憲法を審議したのか
 第三節 貴族院ではどのように憲法を審議したのか

第三部 知られざる「憲法問題」検閲の舞台裏

第五章 占領軍の検閲はこうして始まった
 第一節 憲法問題の検閲はどの程度行われたのか
 第二節 憲法関連の出版物に対する検閲の実態

第六章 占領中に「憲法問題」はなぜ自由に議論できたのか
 第一節 六十九年前にあった憲法大論争
 第二節 出版物で「日本国憲法」の批判はなぜ自由にできたのか

第七章 占領中に「日本国憲法」誕生の秘密はこうして公表された
 第一節 占領中に民政局が公表した「日本国憲法」誕生の秘密
 第二節 占領中に民政局はなぜ「日本国憲法」誕生の秘密を公表したのか
 第三節 占領中に「日本国憲法」の英訳文はなぜ六法全書に掲載されたのか

第四部 知られざる「日本国憲法」の正体

第八章 占領軍が押しつけた「日本国憲法」の正体
 第一節 「日本国憲法」は占領憲法である
 第二節 世界が語る「日本国憲法」の正体

第九章 占領軍が押しつけた第九条の正体
 第一節 第九条と第一条はなぜ作られたのか
 第二節 第九条の発想はどこから来ているのか
 第三節 対日占領政策の転換と日本再軍備の構想

第十章 「日本国憲法」はなぜ改正しなければならないのか
 第一節 「ポツダム宣言」は憲法改正を要求していたのか
 第二節 「マッカーサー草案」を作成したニュー・ディーラーたち
 第三節 「日本国憲法」に秘められた政治思想とは何か
 第四節 戦後、憲法改正の議論はこうして始まった
 第五節 「日本国憲法」のどこを改正しなければならないのか

おわりに

資料 「日本の統治体制の改革」(SWNCC二二八)
引用・参考文献一覧

おわりに

平成二十四年十二月二十六日に、第二次安倍晋三政権が誕生すると、安倍首相は第九十六条の改正とともに憲法改正に意欲を見せたが、その理由は、終戦直後に占領軍によって作られた「日本国憲法」に対する解釈改憲だけでは、もはや新しい事態に対応できないからである。

本書でも言及したように、戦後、改憲を遅らせてきた大きな要因が現行憲法の改正手続を定めた第九十六条にあることは明らかであるが、その他に経復復興を優先して、自国の安全保障をアメリカに依存し、現行憲法が占領軍によって作られたものであるにもかかわらず、この事実を無視したことが改憲を遅らせてきた要因でもある。また明治以来、日本人に培われてきた憲法を「不磨の大典」とみなす意識も、改憲を阻止してきた要因であったろう。

しかし、この憲法では、もはや新しい世界には対応できなくなってきているのが現実なのである。日本人は六十七年もの間、全ての面でアメリカに依存し、世界の現実から乖離した憲法の下で生きてきたが、冷戦体制が崩壊した後、国際社会が大きく変わり、アメリカが世界を動かしてきた時代が終わろうとしているからである。

例えば、今年の四月八日に、中国の常万全国防相は、アメリカのヘーゲル国防長官との会談で対日戦争も辞さないという強硬な発言を行ったが、このことは、アメリカがクリミアとシリアに対する軍事介入を回避したことを見ても分かるように、もはやアメリカには国際紛争を解決できる能力がないことを見抜いた発言であることは間違いないだろう。

こうした現状の中で、国際紛争を解決する手段としての戦力の不保持を謳った憲法第九条の解釈の変更だけでは、もはやこの国難を乗り切ることはできないところまできているのである。

現在の日本で自衛権を行使できるのは、基本的に防衛出動の命令が出た場合のときだけだが、占領憲法をもとに作られている国内法では、中国が公船を使って尖閣諸島に上陸してきても、漁船のようには適応できないので、実力で阻止することは不可能なのである。

そもそも、軍隊というのは、どこの国でも国際法で禁止されている事項以外のことは何でもできることになっているが、「日本の自衛隊だけは、世界で唯一、国際法で動けない」ようになっている。要するに、日本の自衛隊は、警察予備隊としてスタートした関係上、警察の法体系と同じように国内法で規定されていることしかできないのである。

日本の法制度の不備を熟知している中国は、いずれアメリカが軍事介入してこないと判断した段階で、必ず尖閣諸島に上陸してくることは間違いないだろう。この問題を解決するために、たとえ現行憲法の解釈を変更したり、新しく法律を制定して隙間をなくしたとしても、いずれ必ず隙間が出てくるだろう。こうした問題を根本的に解決するには、やはり自主憲法の制定が不可欠になってくるのである。

今から、ちょうど六十年前に、日本自由党の岸信介を中心に「憲法調査会」が発足し、「日本国憲法改正案」が提出されたのは昭和二十九年三月十二日であったが、二年前の衆院選と昨年の参院選を経て、ようやく憲法改正の絶好の機会が到来していることは間違いないだろう。その意味で、もし、この機会を逃したら改憲機運は、当分戻ってこないと思うのである。

戦後、占領軍によって、何から何まですっかり変えさせられた日本という国を、もう一度日本人の手に取り戻すには、今こそ日本人が、その得意とする団結心を発揮して、日本民族の精神を基礎とする自主憲法を制定するしかないと思うのである。


 

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