日本がアジアを目覚めさせた

語り継ぎたい「20世紀の奇跡」インド独立への道

プロビール・ビカシュ・シャーカー 著 2020.12.21 発行
ISBN 978-4-8024-0105-0 C0021 四六並製 232ページ 定価 1540円(本体 1400円)

「はじめに」より抜粋

日本がアジアを目覚めさせた

二〇〇七年八月二二日、インド訪問中の安倍首相(当時)は、インド国会にて「二つの海の交わり」と題する演説を行った。在任中、安倍首相はさまざまな批判にさらされてきたが、バングラデシュ人として私は、この演説を、インド・バングラデシュと日本との関係について、日本の政治家がその歴史的意義を最も明確に、かつ格調高く語ってくれた言葉として、歴史にとどめておきたいと思う。
現在の西ベンガル州をはじめとするインド東部とバングラデシュを合わせた地域は、イギリス人によってベンガルと呼ばれるようになった。インド独立時にベンガルは宗教上の理由から二つの国に分かれてしまったが、民族的には同じベンガル人が住む地域である。
私はベンガルで生を受けた一人の人間として、安倍元首相がこの演説のなかで、偉大なるベンガル人、スワーミー・ヴィヴェーカーナンダやタゴール、パル判事らに触れてくれたことをうれしく思う。特に、おそらく現在多くの日本人が忘れてしまっている、ヴィヴェーカーナンダと岡倉天心の関係について述べてくれたことに感謝したい。
日本とベンガルの関係は、ヴィヴェーカーナンダ、タゴールと岡倉天心、ラス・ビハリ・ボースと頭山満、大東亜会議におけるスバス・チャンドラ・ボースと東條英機、東京裁判(極東国際軍事裁判)でのパル判事と下中弥三郎との交流という両国の偉大な人物のかかわりが、激動の時代のなかで、このアジアの歴史を切り開いた壮大なドラマとして展開されていった。私はこのことを今、一人のベンガル人としての立場から、日本の皆さまに語っていきたいと思う。



目次


はじめに

第一章 日本とベンガルの交流のはじまり
 近代初期の交流
 ヴィヴェーカーナンダと日本
 岡倉天心のインド訪問
 アジアは一つ
 天心がインドの民族運動家に与えた影響

第二章 タゴールと岡倉天心
 「現代のルネッサンス人」タゴール
 ベンガル・ルネッサンスに与えた天心の影響
 タゴールのノーベル文学賞受賞と『ギータンジャリ』
 タゴール来日と新たな日印関係の始まり
 タゴールが日本に遺したもの

第三章 ラス・ビハリ・ボースと日本
 頭山満、ビハリ・ボース、そしてタゴール
 ビハリ・ボースと中村屋
 相馬俊子との結婚

第四章 受け継がれる「独立」への意志
 大東亜戦争開戦とインド独立連盟の結成
 ビハリ・ボースからチャンドラ・ボースへ

第五章 チャンドラ・ボースとインド国民軍
 日本を動かしたチャンドラ・ボース
 大東亜会議で表明したインド独立への決意
 大東亜そのものの大東亜戦争
 インパール作戦の失敗とボースの死

第六章 「パル判決書」の歴史的意義
 「正義の人」パル判事
 なぜパル判事が東京裁判に加わることになったのか
 パル判決が暴いた東京裁判の欺瞞
 その後のパル判事と日本

第七章 バングラデシュ小史
 イギリス植民地のもとでのベンガル分割
 インドからの分離とバングラデシュ独立
 独立後も安定しない政局
 シェイク・ハシナ政権がもたらした政治・経済的安定

特別対談 ペマ・ギャルポ×シャーカー
 バングラデシュ独立とチベット人
 日本によるバングラデシュ支援
 誇り高きベンガル人
 岡倉天心とタゴールが交流した意義
 「アジア主義」は正しかった
 渋沢栄一とタゴール
 ガンディーとネルーが見たチャンドラ・ボース
 日印の文化交流がインド独立に結びついた

おわりに
主要参考引用文献


 

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