犬本・読書感想文 最優秀賞

「マルコの東方犬聞録」を読んで思ったこと

宇田 美津江 (東京都府中市 31才)


 マルコ・ブルーノさんの著書「マルコの東方犬聞録」を読んで、私は心がひりつくように痛み、自己嫌悪に深く陥ってしまいました。
 私は少女時代に犬を飼っていました。今になって思えば、ズサンでいい加減な飼い方をしていましたね。母は動物嫌いなのに相当無理をしていました。犬を飼って8年目、結局私は病身になった飼い犬を獣医に連れて行かず、そのまま見殺しにしてしまいました。自分勝手で言い訳がましいけど、家の都合で結局そうせざるを得なくなったのです。それ以来、私はその死んだ飼い犬の姿が頭の中に浮かんでくるたびに、夢の中に出てくるたびに心が罪悪感に打ちのめされて痛み、悲しくて悔しくて涙が出る思いでいっぱいです。もう私には犬を飼う資格なんて無いのです。ましてや、犬や猫を捨てる人を一方的に非難する立場ではありません。
 本書を読んで、過去のこれまでの自分は「動物を心から愛する」という意味を根本的に間違えていたように思うのです。たぶん、「宝石などの装飾品が好き」と同等のレベルでしか、動物を愛していなかったような気がするのです。きっと、動物のキレイな部分だけに惹かれていただけで、肝心な「生命の本質」を知らなかったのだと思うのです。
 動物は、人間と同じように感情や意志を持ち、尿とフンを排泄する。ときには人間に迷惑をかけたり、手を焼かせたりする。だけど、人間に色々と大切なことを教えてくれる。「地球は人間だけのものではない」と戒めてくれる。地球にまたたく光、それが動物の生命なんだと遅ればせながらに気がつきました。過去に犬を飼ってみて、そして本書を読んで、この重要なことを悟りました。「便利で快適で清潔、物質豊かなのが最高の幸せ」と、日本の人間社会で生まれ育った私はそう教えられ、洗脳されていたのかもしれません。「国の決まり」だからと保健所での動物殺処分の制度に疑問を持たず、心の底から反発せず、ただ無関心を装ってあきらめていました。
 結局、私たちは自分たちの都合の良い形で物事を進めていこうと考えてばかりいるのではないかと思うのです。だから、自分の都合次第で、損得の感情で簡単に地球上のあらゆる「生命の友達」を裏切ってしまえるのでしょう。
 私たちは「地球の権力者」と思い上がり傲っているから、「すべての動物は人間の幸せのために利用する」打算的な考えがあるのかもしれません。その結果が生命の友達である動物を「生命」と思わず、「物品」と見なして扱ってしまえるのです。そんな感覚がいつの間にか染み付いてしまっていた。生命の本質を知らず、ご都合主義で身勝手な形で犬を飼っていた過去の自分が情けなくなって嫌になるけど、過去のあやまちを悔やんだりしても何も始まらない。今は前向きに少しでも不幸な身の動物たちの役に立てばと思い、動物愛護団体に協力をしています。この国の動物殺処分制度だって絶対になくしてみたい。そして、本当に人と動物が共存する社会を築いていきたい。
 大切なことを教えてくれたマルコさんの著書に感謝します。そして、今は亡き飼い犬のジュリーにも「ありがとう」って言いたいです。

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