犬本・読書感想文 優秀賞

ジローが教えてくれたこと

藤田 かおり (大阪府八尾市 30才)


 読書が好きで、たくさんの本を読みますが、これまでのどの本よりも感動しました。
 車に乗って高速道路を走り、預けられた見知らぬ町からよく帰ってきたものです!本文中にもありましたが、知っている道であれば、帰ることは簡単だったかもしれません。けれどジローは、車で運ばれた数十キロ道のりを帰ってきたのです。しかも、自分がいた元の家ではなくて、新しく越したマンションを探しあてたなんて!。実話なのが信じられないくらいです。
 たどり着くまでの二年間、どれだけ心細かったことでしょう。それでもなお、主人に会いたいと思い続けたジローの気持ちを想像すると、涙があふれてきました。
 ジローは犬だから、もちろん話すことはできません。辛かったことを聞くことはできませんが、コンクリートで割れた爪、汚れてドロドロになった毛並みが、ジローの体験したことを物語っているのですね。
 ジローは旅の間、いろんな人に追い払われたりしたことが書かれてありました。もちろんそれらのことは、ジローの様子から想像されたことです。
 ただ確かに、ジローのようにやけに人なつこい野良犬に出会うことがあるのです。そんなとき、野良犬は汚いしゴミをあさるので、やはり追い払ったりしてしまいます。もしかしたらその犬も、ジローと同じように、飼い主を探しているけなげな犬かもしれないのに。
 この本を読んで、犬に、そして動物に対する考えが変わりました。みんな、飼い主を信じている。それを裏切ってしまうのは、私たち人間の方なのですね。
 毎日多くの野良犬が捕らえられ、処分されている一文がありました。その中にもきっと、飼い主を探している犬がいるはずです。
 ジローの物語は、ジローだけの話ではないと思います。
 私自身は今、セキセイインコを飼っています。もう七年生きています。ジローの物語を読んで、改めてこのインコを大切にしていこうと思いました。同時に『一寸の虫にも五分の魂』ということわざが頭に浮かびました。
 すべての動物を大事にしていこう。そう、心から思わせてくれる、実に素晴らしい本だと思います。

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