中国新聞 2002.02.06 「天風録」より 

「天風録」でかまだしゅんぞう氏紹介

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スーホの白い馬に会ったよ

子どもにも動物にも優しい人のようだ。思い立ったらすぐ行動する人でもある。広島市立中野小学校教諭の鎌田俊三さん(47)。自作の童話「スーホの白い馬に会ったよ」(ハート出版)を送ってもらった。モンゴルに伝わる馬頭琴の伝説−。スーホという少年にかわいがられた白い馬が、欲張りの王様に殺される悲しい話である。その馬が夢で「わたしの毛や筋、骨で楽器を作りなさい」とスーホに言った−。施設内学級の鎌田さんの教え子「やっちゃん」は脳性マヒで手足が不自由だった。この伝説が大好きでみんなで影絵劇にして、地域の中学校の文化祭発表することになった。やっちゃんは白い馬になりきって見事に演じた。障害児をからかっていた2人の中学生もやっちゃんの熱演に感動して拍手を送った。「モンゴルに行って白い馬に乗りたい。馬頭琴を聴きたい」というのがやっちゃんたちの夢だった。「いつか一緒に行こう」と鎌田さんは約束した。しかし、やっちゃんは事故で大やけどを負い亡くなった。鎌田さんはやっちゃんの写真を胸にモンゴルを訪れ、白い馬に乗り、馬頭琴の演奏を聴く。そんな鎌田さんの体験をもとに書いた童話である。やっちゃんのお父さんから「涙が止まりません。いい本でした」と電話があったのが、鎌田さんには一番うれしかった。いまは障害児との交流教育も盛んになった。「でも心のバリアフリーはまだまだ」と、鎌田さんは言う。

 


ハート出版