朝日新聞2003年4月1日

亡くなった男性と後追った犬
ガード下の友情が童話に

ホームレス襲撃事件題材に関さんが執筆
命の大切さ訴える

関連書籍





ガード下の犬ラン
関朝之 著


「さみしさを分かち合って一つずつ夜を越えてきた」
 3年前に墨田区内で起きた少年らによるホームレス襲撃事件をもとに、被害者男性と犬との触れ合いを描いた童話ができた。同じような事件が相次いでいることに心を痛めたフリーライター関朝之さん(37)が取材し、「命の大切さを分かってほしい」という願いを込めて書いた。
 墨田区亀沢2丁目のJR総武線のガード下で、廃品回収業小茂出清太郎さん(当時68)が少年ら3人襲われ金属バットで殴られ死亡した。関さんはガード下周辺の人たちに小茂出さんがよく食事を分け与えていた犬のランが小茂出さんが死亡して約半年後に後を追うように死んだことを知り、物語にすることを思いついた。
 物語は、小茂出さんの人となりや、推定13才で新だランとの交流を中心にしている。少年らに襲われた後、一度逃げた小茂出さんがランのいるガード下に戻ってから改めて襲われた様子も関係者の証言をもとに再現した。
「ランも家のないガード下の犬。「さみしくっても私がついているよ」と言ってくれてるのかもしれない。そやって、さみしさを分かち合って一つずつ夜を越えてきた」
 食料品店員の福田よし子さん(64)から聞いた、小茂出さんの言葉も盛り込んだ。
 福田さんは「つらいことはいつかくる喜びのための心の貯金だと思うよ、と話していたのを覚えています。やさしかった小茂出さんの思い出が物語になってうれしい」と喜んでいる。


朝日新聞2003年4月1日




 


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