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■　破産・倒産　■

或る倒産

地獄の底を覗いた男の手記

第１回ハート賞受賞作品

丹羽幸雄　著　1999.11.30　発行　　

ISBN 4-89295-149-8 C0036　四六上製・192頁・定価 1760円（本体 1600円）

　会社を倒産させてしまってから、二年が経過しました。最近ようやくその森の中も走り抜けることができたことを感じています。
「いかなる選択をしても、人生の終わりを迎えるときには、その全てを受け入れるのではないでしょうか。安らかな眠りにつくために」
　と聞いたことがありますが、その通りだと思います。その死が必然であれ、故意であれ。

　夜は様々な不安や妄想を増幅してくれます。眠れぬ夜を過ごし、外が明るくなってようやく安心して眠ることができる、そんなことを何度繰り返したことでしょう。自分の様な病人をいまだ生かしてくれている、この世の中と人たちに感謝しています。
　私はここで自分が苦しい立場にいることを訴えたり、同情を求めていく気はありません。苦労ということであれば、私以上の苦労をしている方は大勢いらっしゃいます。
　しかし、今の時代、今回の不況期における典型的な倒産を、そこに至る過程からその後の経過まで全て経験した者として、何か残しておきたかった。また何かの機会にこの文を目にした人に、一つでも参考にしてもらえることがあれば、といった気持から書き始めようとしています。

　倒産時、私の役職は常務取締役でした。私の父が代表で、しかも営業に専念しており、また名誉職的な役割を他社から依頼されてもいました。ですから、仕入れを含めた営業管理、銀行交渉を含めた財務管理等、あらゆる部門での実質的な責任者は私でした。従って倒産後の処理も全て自分が中心となって体験したものであり、その意味では悩んでおられる経営者の人たちのみならず、それに準ずるみなさんにも参考になるのではないかと思っています。中には法律に反した行為をしたことも話さなくてはならなくなると思います。しかしそうしたことこそ、みなさんの役に立つのでは、と考えています。

　倒産に至るまでの過程から終結までを経験したことや、二度の自殺未遂からようやく再び生きる喜びを感じ始めた私の体験と知識など、何の役にも立つことのないときが、あたり前なのだと思います。しかし今、倒産を考えている人や仕事を失った人の数は膨大なものになっています。ほんの少しでもそうした人たちや世の中に役に立つことができるのなら、できる限りの協力をさせて頂きたいと思っています。
　私のような後悔や悲惨な結末を迎えないように。そして再び立ち上がっていただくために。

倒産の日

仕事と男の夢

倒産計画

限界までの疾走

忍耐のとき

夢は捨てない