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■　ドキュメンタル童話シリーズ犬編　■

犬ぞり兄弟ヤマトとムサシ

ハスキー犬がボランティアで大活躍

第５回わんマン賞受賞作品

小学校中学年以上向き

甲斐　望　作　　2002.03.14　発行　　

ISBN 4-89295-262-1 C8093　Ａ５上製・160頁・定価 1320円（本体 1200円）

　長野県にある県立長野こども病院には、年２回ちょっと変わった犬たちがお見舞いに来るのです。その変わった犬たちとは、神奈川県犬ぞりクラブのボランティア。ヤマトとムサシの兄弟も、その仲間です。
　ヤマトとムサシが引っ張るそりに乗った子どもたちは大喜び。病気で落ち込みがちだった子どもたちや家族の心もどんどん癒されます。
　しかし、子どもたちの心を癒すそんな彼らにも、実はさまざまなドラマがあったのです……。

　　　　　やくそくの日

　　　　　メイの自転車そり

　　　　　ナッツ、レースに初ちょうせん

　　　　　おすまし犬・ヤマトあらわる

　　　　　ヘンテコ四輪そりがきた！

　　　　　新入生、ヤマトです

　　　　　病気とたたかう子どもたち

　　　　　海をこえてきた旅犬

　　　　　おさわがせ犬・ムサシ参上

　　　　　あやちゃんのお世話犬

　　　　　そしてまた、走る

　　　　　あとがき

　小学五年生のとき家に犬がやってきました。名前は「ケン」。茶色の柴犬です。
　わたしはさいしょ、ケンがきらいでした。
　なぜなら、前にかっていた犬「コロ」とちがっておりこうではなく、あばれん坊で、ほかの犬と会うと、いつもケンカばかりしていたからです。
　あるとき、おばあちゃんがいいました。
　「この犬はね。捨てられてたんだってさ」
　それを聞いてから、わたしは少しずつケンを好きになってゆきました。
　言葉って、ふしぎです。
　たったひと言で、目の前にみえる世界がガラリと変わってしまうこともあるからです。
　でも、言葉は口から出るものばかりじゃない――そんなことを、今回出会った犬ぞりの犬たちは教えてくれました。
　このお話ができあがるまでに、たくさんの月日が流れてしまいました。とちゅう、書くのをやめてしまおうと思ったときもありました。
　そんなとき、ある先輩がこういったのです。
　「お話だって、捨て犬と同じだよ」
　びっくりするわたしに、
　「キミはだまってとおりすぎることもできる。けれど手をさし出して、そのお話をかわいがることもできるのさ」
　といったのです。
　わたしはまた、書きはじめました。
　こんなふうに、たくさんのはげましのお言葉をいただき、この本ができあがりました。
　神奈川犬ぞりクラブのみなさま、長野県立こども病院「ひだまりの会」のみなさま、ご協力ほんとうにありがとうございました。また、ハート出版・日高社長、編集の藤川さんをはじめ、スタッフの方々にもお世話になりました。
　みなさまに心より感謝もうしあげます。
　そしてさいごに、天国でくらすコロとケンへ。「犬ってたのしい」ってことを教えてくれて、ほんとうにありがとう。
　子どもたちの、大人たちの、犬たちの、みんなの命の言葉が、いつまでもかがやきますように――。

■　甲斐 望（かい　のぞみ）　■

犬が大好きで小学生のときから獣医を目指すが、大学受験に失敗。予備校通いの後、東京女子大学に入学。数理学科に在籍し化学者を目指すが、人間の体内の構造を眺めているうちそのあまりの美しさに「人ってすごい！」と感動。毎日たくさんの人と関われる仕事を求めて故郷の茨城新聞社に入社。3年半の勤務の後、さらに遠くの人との出会いを求め、フリー記者へ転向。国内・海外の取材を通じ、児童書や女性誌などで命や心をテーマとした作品を手がける。最近では地球の外のヒトにも会いたいと、ファンタジー童話も執筆中。 所沢市在住、イヌどし。

■　写真家紹介・馬場 桜（ばば　さくら） 　■

1972年生まれ。茨城県取手市に育つ。愛知県立芸術大学デザイン科卒業。写真スタジオアシスタントを経て、現在はフリーのカメラマン。子供や身近な生き物をカメラにおさめる。