産経新聞(大阪版) 2001.03.03より

教え子の夢モンゴルへ

広島の小学校教諭 一人旅、童話に

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「先生と一緒にモンゴルに行って白い馬を見たい」──。
不慮の事故で死亡した教え子の夢をかなえようと、広島市の小学校教諭、鎌田俊三さん(48)が現地を一人旅し、童話「スーホの白い馬に会ったよ」(ハート出版)をこのほど出版した。
本はA5判、約160ページ。鎌田さんは昭和55年広島県福山市にある肢体の不自由な子の施設に赴任。脳性まひのため手足が不自由だった当時13才の柳原泰司さんの学級担任となり、その交流やモンゴル一人旅の体験を中心に童話を仕立てた。
鎌田さんは柳さんらと日本の教科書でも親しまれているモンゴルの民話「スーホの白い馬」の影絵劇を、地元中学校の文化祭で演じた。白い馬の役を演じた柳さんはモンゴルにあこがれ、2年後の鎌田さんの転勤の際に「一緒に行きたい」との思いを吹き込んだテープを渡したという。
しかし、大阪府内の養護施設に移った柳さんは平成5年、ライターの火が衣服に燃え移って大やけどを負い、入院約40日後に死亡、夢をかなえることができなくなった。27才だった。
鎌田さんは12年夏、柳さんの遺影とともに一人でモンゴルへ行き、遊牧民と生活。童話には、民話で白い馬が弦楽器になったというモンゴルの代表楽器「馬頭琴」の演奏を聴いた体験もつづられている。鎌田さんは「夏に馬頭琴奏者を日本に招き、演奏を聴きながら本の読み語りをしたい」と話している。

 


ハート出版