朝日新聞2002年11月11日

忘れない 介助犬「武蔵」

介助犬「武蔵」をしのんで生徒らが貼り絵作成

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 難病の女子中学生に連れ添って登校し、2月に急死した介助犬「武蔵」のはり絵が茨木市若園町の市立南中学校に飾られている。学校の人気者だった武蔵を忘れまいと生徒と教員で作った約90センチ四方の作品だ。生徒からのメッセージを刻んだプレートも添えられ、頼もしい武蔵の雄姿がよみがえった。
 武蔵は黒いラブラドルレトリーバーの雄。日本介助犬トレーニングセンター(京都市)が無償貸与し、せき髄性筋委縮症で電動車いすを使う2年生の稲積久美子さん(13)と昨年9月から登校を始めた。自宅から一緒に学校に通い、普段の授業はもちろん、体育祭にも一緒に参加して生徒の一人のように学校生活を送っていた。
 だが、2月に突然体調を崩して病死した。2歳だった。武蔵を永遠に思い出に残そうと、生徒会が中心になってはり絵作りを呼びかけた。車イスの車輪の隣で舌を出しながら寄り添う武蔵の姿は生徒自身がデザイン。生徒と教職員が放課後に集まり、色つきの和紙を細かくちぎってはり重ねた。約1カ月かかって色鮮やかな作品を仕上げた。額縁に入れて9月から校舎1階に飾られている。
 「彼はかっこいい そしてすばらしい 彼は考え 働いて この世を去った だから彼は人々に愛された ムサシだから」。はり絵に添えた銀色のプレートにはこんな生徒の思いを込めた言葉も記されている。
 稲積さんは武蔵の死後も友人らの協力で一人で通学を続け、吹奏楽部の活動にも元気に参加しているという。稲積さんは「武蔵にはもっと一緒にいてほしかった。がんばって高校に進学したい」と話している。

 


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