「高知新聞」2004年1月5日

野良犬ゲン童話に 

食い込んだ首輪外し救う
東京のライター 安芸市民らの心に打たれ 

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 安芸市で昨年2月、首輪が首に食い込んだ野良犬を市民らが協力して助けた取り組みが、童話になった。「のら犬ゲンの首輪をはずして!」(ハート出版)。主人公となった同市庄之芝町の自営業、池川公一さん(64)、佐鶴子さん(60)夫妻は「一人でも多くの人に読んでもらって、二度とゲンのようなかわいそうな犬が現れないようにしてほしい」と話してる。

 野良犬は雑種で白い雄。子犬の時に捨てられたまま成長したらしく、小さな首輪が首に食い込み、傷口は血が固まって化膿していた。
 多くの市民が保護しようとしたが、よほどの虐待を受けたのか、人におびえ決して懐こうとはしない。池川さん夫妻は「早く元気になってほしい」という思いから元気の「ゲン」と名付け、約1年3か月間、自宅前餌を与え続けて世話をしたが、懐かなかった。
 そこで市民有志と市、県安芸保健所の職員らは昨年2月、大規模な保護作戦を展開し無事保護、長年ゲンを苦しめてきた首輪をようやく外した。
 童話の作者は、動物と人との触れ合いを描くノンフィクションライターの関朝之さん(38)=東京都江戸川区。報道でゲンのことを知った関さんは「住民が協力して一匹の犬を助けたいと頑張った。その心の発露に打たれた」、と同士を訪れ関係者に取材。池川さんとゲンとの出会いから、新しい飼い主に引き取られるまでを心温まる童話にまとめた。
 ゲンとも“対面”した関さんは「初めてテレビを見たときは痛々しかったけど、首輪が外されて落ち着いた様子。のんびり暮らしていましたね」と、うれしそうに話す。
 ゲンの近況について、新しい飼い主の同市本町四丁目の自営業、西岡悟さん(59)は「前は散歩に出ても座り込んで動かなくなることがあったが、今はちゃんと歩けるようになった」。池川さん夫妻も「表情ががらりと変わった。デンと構えちゅう。童話を通して子供たちに、命の大切さは人間も犬も変わらないことを学んでもらえたら」と話している。


高知新聞2003.01.05

 


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