新潟日報2006年5月1日

災害救助犬「トマト」

出動日本一 一生を本に
飼い主との絆 活躍をつづる

 十日町市上川町、ペットショップ経営西方真さん(35)がトマトに出会ったのは1996年。翌97年、民間ボランティアチーム「災害救助犬十日町」を結成した。トマトは西方さんと深い絆で訓練を繰り返し、チームのリーダー犬に成長。県内で初めて、山林捜索と倒壊家屋捜索の二つの試験に合格した。
 出動は年に約20回。2003年5月には、タケノコ採りに出掛け遭難した女性が、がけ下で倒れているのを捜索から30分で発見し、一命を取り留めた。厳しい訓練が実を結んだ相次ぐ活躍。西方さんにとってトマトは「最高のパートナーだった」。
 しかし、04年11月、いつものゲージの中で、トマトは死亡した。死因はストレス性胃捻転。中越地震後、トマトの遊び場がペット預かり所になり、日課の訓練ができなくなっていた。環境の激変がストレスの要因と考えられた。
 同書を執筆した、オーストラリア在住の作家池田まき子さんは、この話をインターネットの新聞記事で知った。昨年11月に来日し、西方さんらを取材、2カ月をかけ書き上げた。池田さんはトマトの活躍や悲しい別れの裏に何があったのか知りたかった」と語る。
 トマトが死亡したのは、西方さんと地震後初めてボール遊びをした翌日だったことなど、同書には知られざるエピソードが豊富な写真とともに掲載されている。物語の結びは、悲しみを乗り越える西方さんが育てる二代目「トマト」のお披露目シーン。西方さんが驚く出来栄えとなった。
 西方さんは「トマトは人のために我慢し、最期まで救助犬として死んだ。災害救助犬をより多くの人に知ってほしい」と話している。



新潟日報2006年5月1日

 


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