日本の南洋戦略

南太平洋で始まった新たなる〈戦争〉の行方

丸谷 元人 著 2012.07.25 発行
ISBN 978-4-89295-927-1 C0031 四六並製 416ページ 定価 2090円(本体 1900円)

「日本の裏庭」南太平洋の安全保障体制を維持すべし

日本の南洋戦略 ―南太平洋で始まった新たなる〈戦争〉の行方

太平洋における覇権確立を目指して強気を崩さない中国。
かつての影響力を失いかけている
旧宗主国オーストラリアと超大国アメリカ。
そして、これからの鍵を握る資源大国パプアニューギニア。
日本は、今こそ「海洋国家」として復活し、
日米豪による新たな「ジャンザス体制」を構築して、
「日本の裏庭」南太平洋の安全保障体制を維持すべし。



「はじめに」より

あの美しい南太平洋が、これから資源戦争、そして米中覇権争いの「主戦場」となる。そしてその戦いの結果は、日本にとっては厳しいものになる……。

これは、この一〇年間、パプアニューギニアやオーストラリアを中心にして南太平洋情勢を見つめてきた者としての、確信に近い感想である。このことを七年以上も前から、いろいろな政治家や経営者たちに言い続けてきたが、関心を持つ人はごくわずかだった。なぜなら、ほとんどの日本人にとって、南太平洋といえば茫洋とした美しい海が広がり、ヤシの木々が茂る白い砂浜が続いているだけで、新婚旅行やスキューバダイビングに行くのはいいかもしれないが、それ以外にめぼしいものは何もない、という程度の場所だからである。

しかし、この認識は明らかに間違っているし、日本の将来を考える上では「危険」ですらある。なぜなら、地政学的にも日本の「裏庭」に位置している南太平洋地域は、日本に大量の食糧や資源を供給しているオーストラリアとの間の海上交通(シーレーン)の要所であると同時に、日本が必要とする資源の多くが手つかずのまま眠っている「未開発地域」でもあるからだ。

事実、この地域は現在、世界有数の「巨大資源地帯」として注目されており、各国政府や資源メジャーが熱い視線を注いでいる。そしてそんな南太平洋地域の安定を脅かしつつあるのが、急激な海洋進出政策を推進する、中国の存在である。

南太平洋島嶼国といえば「親日国家」の集まりである。しかしここ数年、中国が「政・官・財・業・軍」のすべての資源を惜しみなくこの地域に投じ続けてきた結果、貧しかったそれら島嶼国の多くが中国の進出を受け入れるようになり、資源争奪戦の最前線と化しつつある。これによって、南太平洋地域は、かつては考えられなかったような「米中覇権争い」の新たな「主戦場」となりつつあるのだが、当の日本は充分な対策を打ち出すことができていないのである。一日も早くこの厳しい現実を直視し、ただちに具体的な対策を実行しなければ、日本はやがて取り返しのつかない過ちを
犯すことになるだろう。

私は今、凄まじい勢いで変化する南太平洋の戦略環境やその重要性を何としても日本人に伝え、何がしかの提言をせねばならないとの思いからこの文章を書いているが、そんな本題に入る前に、なぜ私自身がここまで南太平洋の問題に関わるようになったのか、その「きっかけ」を説明させていただきたい。キーワードは「日本軍将兵とパプアニューギニア人が築いた絆」と、そこから生まれた「親日の情」であった。

(以下略)


動画による内容紹介

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youtube
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ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/mylist/38136944

目次

はじめに

第一章 いま、南太平洋で何が起こっているのか
 南太平洋は「日本の生命線」
 日本の石油ルートの運命を握る中国海軍の圧力
 「ロンボク‐マカッサル海峡ルート」の安全を脅かす「ブルネイ」の行方
 「イスラミック・マラユ連邦」と、その背後に見える中国の影
 二〇一五年、日本は窮地に追い込まれる
 南太平洋の防衛こそ、日本の生きる道
 南太平洋で「宗主国」として君臨していたオーストラリア
 反オーストラリア連合としての『メラネシア急先鋒グループ(MSG)』
 フィジー問題で「外交的敗北」を喫したオーストラリア政府
 「キューバ化」するフィジーを支える中国
 アメリカに政治的主導権を奪われたオーストラリア
 「巨大資源国」パプアニューギニアの戦略的重要性
 経済は未曾有のバブル状態
 世界的な「銅不足」とパプアニューギニアの「金」「銅」資源
 欧米列強が「触手」を伸ばしたパプアニューギニア
 ゴールドラッシュから始まったパプアニューギニアの「近代」
 日本の諜報機関も知っていた「ゴールドの島」
 川の水で下痢をして「地下資源の存在」を知った日本兵
 「建国の父」マイケル・ソマレ首相
 「植民地からの解放者」として振る舞う中国
 リゾート地「マダン」にあふれる中国人労働者
 南太平洋版「真珠の首飾り」を危惧するオーストラリア

第二章 謀略渦巻く「豪中戦争」
 「二人の首相」を誕生させた二〇一一年夏の政変
 オニール氏を首相にした「豪腕」ベルデン・ナマ副首相
 盛り上がるオーストラリア軍派遣論
 ソマレ派のクーデター未遂と「インドネシアの影」
 インドネシア軍の戦闘機に追跡されたナマ副首相
 最高裁判事を「襲撃」
 オーストラリアに「切られた」ナマ副首相
 ついに派遣されたオーストラリアの「特殊部隊」
 「大どんでん返し」が起こった二〇一二年総選挙

第三章 ニューギニアの日本兵
 大東亜戦争の激戦地
 多くの日本兵を救った精強「台湾高砂族」
 高砂族だけではない台湾の「親日」
 今でも目撃される戦没将兵らの「幽霊」?
 日本兵に対する様々なイメージ
 日本兵の「組織的人肉食」と「大量レイプ殺人」事件?
 根底から崩れる「現地人慰安婦一万六〇〇〇人」説
 パプアニューギニア式「数の数え方」
 「あなたたちの祖父は、最低な連中だ」
 人肉食を「組織的に」行った残虐日本軍?
 日本人がやると「極悪非道」
 連合軍の犯罪は指摘しないのか?
 戦後日本人の「植民地コンプレックス」

第四章 遠くて近い「親日国」パプアニューギニア
 日本人は必ず帰ってくる
 ニューギニアの『君が代』
 「ニューギニア式高射砲」で連合軍と戦った現地人兵士
 ブーゲンビル島における日本軍と住民の交流
 パプアニューギニアで会社を設立
 苦しかった現地人の組織化
 連続した「裏切り」と「反乱」
 「最強チーム」の完成

第五章 「南太平洋の管理者」オーストラリア
 なぜオーストラリアは豊かなのか
 オーストラリア人はシャイで純朴
 対日戦争の記憶
 『オーストラリア本土攻略論』の幻想
 國神社で考えを変えたオーストラリア人教師
 國神社にA級戦犯の「遺骨」が埋葬されている?
 捕鯨論争の決着が必要
 オーストラリアの南太平洋外交と「白豪主義の亡霊」
 「ソフト対策」による信頼醸成が必要

第六章 迫り来る南太平洋での覇権争い
 資源開発の「闇」
 鉱山開発が引き起こした「ブーゲンビル島内戦」の悲惨
 動き出した中国、「蚊帳の外」の日本
 アフリカの「現在」に見る南太平洋島嶼国の「未来」
 「期待」から「嫌悪」へ
 現地人と中国人との戦い
 中国の情報収集(諜報)活動
 中国諜報機関のナンバー2を雇っていた日本政府と「高級新聞」
 狙われる自衛官
 オーストラリアの「地下」で活動する中国
 インフラを押さえ、軍が展開
 古典的な「毒薬」を飲む政治家たち
 パプアニューギニア国防軍に「出資」する中国
 南太平洋で日本を「包囲」する中国
 オーストラリアで日本語教育を「狙い撃ち」する中国

第七章 海洋国家・日本の復活
 南太平洋に生じつつある「権力の空白」
 「中国の夢」は、筋違いの「先祖帰り」
 中国が保有する「対米金融核爆弾」
 揺れるオーストラリア
 ついにオーストラリアも「巨額の軍事費削減」へ
 日本の潜水艦を欲しがるオーストラリア
 今こそ島嶼戦への備えを
 「JANZUS(ジャンザス)体制」の確立を急げ
 テニアン島とブーゲンビル島に「拠点」を設置
 海上保安庁巡視船の「無償供与」と「訓練協力」
 日本は「率先垂範」で、「持続的発展」の基礎作りをすべし
 世界に誇る「交番制度」の輸出を
 インフラ整備と「食べていける地元産業」の育成
 環境技術では、オーストラリアと緊密な協力を
 失われつつある部族の言葉を「カタカナ」で記録すべし
 「ジャンザス体制」における共同の「遺骨収容作業」を
 日本人よ、もっとリスクをとれ

おわりに



 

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