アメリカに正義はあるのか

グレンデール「慰安婦像」撤去裁判からの報告

目良 浩一 著 2018.04.30 発行
ISBN 978-4-8024-0055-8 C0021 四六並製 232ページ 定価 1650円(本体 1500円)

これが“アウェイ"で戦う慰安婦問題の真実だ!!
「東京裁判」並みの米国司法による「日本軍=悪」史観で敗訴となる一方、
米国を主戦場とする恐るべき中韓「抗日」組織の策謀が明らかになった。

はじめに

アメリカに正義はあるのか グレンデール「慰安婦像」撤去裁判からの報告

この本を書くにあたり、まず最初に感謝したいのは、裁判を始めた直後に日本に帰り、衆議院議員会館の大会議室で「帰国報告会」を開催した時に集まっていただいた、四〇〇人余の方々から受けた情熱である。熱気にあふれるその会場で我々を激励していただいた。さらに、それに続く二万人余の方々から、寄付金による支援をいただいた。それらの支援が、三年を越すアメリカでの慰安婦像撤去裁判を続けさせる原動力となった。感謝に堪えない。

アメリカでは、慰安婦問題は、まったくと言ってよいほど知られていない。知っている人でも、韓国の挺対協などからくる風説や、マイク・ホンダ元下院議員の主張している日本責任論くらいである。
このような状況の中で、我々は、グレンデール市の実施した慰安婦像の設置は米国の憲法に違反する、という憲法論で戦った。グレンデールのような地方自治体が、連邦政府が独占するべき外交問題に関与するのは、米国の憲法違反であるとする主張である。
彼らの唱える慰安婦論が歴史的な事実に合致しないとか、日本人に対する差別であるとかの理由で戦うことが、より皆さんの心情に合致しているのは承知していたが、歴史的な認識論を裁判で決着するのは困難であり、日本人に対する差別を主張することも、裁判における訴因としては弱いと弁護士に言われたのである。
それでもこの裁判は、徹底的に韓国系・中国系の団体からの強い抵抗を受けた。しかも、米国の裁判所の判事たちには、慰安婦問題について日本軍が悪事を働いたという先入観が植えつけられており、それによって、法理論よりも感情論で判決が出されたという傾向が強い。
この著書は、今後、類似の訴訟を米国で起こすことを考える際の参考になるであろうし、より一般には、アメリカにおける司法の役割、性向、限界などを知るための参考になると思われる。

この裁判を実施するには、多数の方々の、心からの協力をいただいた。特に前半においては、GAHTのコアであった水島一郎氏、高橋光郎氏、鎌倉花氏、そして原告第一号であったミチコ・シオタ・ギンガリー氏(二〇一五年に鬼籍)、そして中盤から後半にかけては、細谷清氏に感謝したい。特に細谷清氏の積極的な協力なくしては、最高裁まで到達できなかったと思う。さらに、終始この裁判に精魂を傾けた妻、久美子に謝意を表明したい。
また、日本でこの裁判を支援し、広報・募金活動などにおいても協力していただいた以下の諸氏にも、深く感謝する次第である。加瀬英明、藤岡信勝、藤井厳喜、山本優美子、桝田淑郎(二〇一七年に鬼籍)。さらに、募金活動に協力をいただいた櫻井よしこ氏と、すぎやまこういち氏にも謝意を表明する。
この出版に関しては、全原稿に目を通して詳細な点に関してコメントをいただいた、現代史家の秦郁彦氏に深く感謝するとともに、ハート出版の日高社長を含む職員一同に、迅速でプロフェッショナルな仕事をしていただいたことを感謝する次第である。





目次

はじめに

第一章 日本人の名誉を保つために
 慰安婦像の背景
 慰安婦像建立に関する公聴会
 日本史を学ぶ「日本再生研究会」の発足
 慰安婦記念碑の建立
 日本人たちの反応

第二章 グレンデール市を提訴する
 慰安婦像設置に対する反響
 ブエナ・パークでは設置案が敗退
 訴訟戦略の検討
 訴状の作成と組織の確立
 訴状の概要
 メディアに向けた記者会見

第三章 中韓「反日」団体からの反撃
 フォーブス記事のインパクト
 アミカス・キュリエ(意見書)の提出
 身辺に迫る危険

第四章 在米日本人と日系アメリカ人
 日系アメリカ人は「アメリカ人」である
 裁判に反対する日系アメリカ人
 サンフランシスコでの公聴会と元慰安婦
 日系人リーダーの存在
 日系ブラジル人との対比

第五章 アメリカにおける情報戦
 アメリカ人に「日本の常識」は通用しない
 ルーズベルト神話と慰安婦性奴隷説
 英語の文献が圧倒的に足りない
 マイク・ホンダ議員と下院一二一号決議の背景
 吉田清治の著書を根拠とする英語文献

第六章 グレンデール市慰安婦像撤去裁判の経過
 連邦地方裁判所に提訴
 グレンデール市と、その協力者たちの反応
 連邦地方裁判所の判決メール
 連邦控訴裁判所への控訴
 カリフォルニア州裁判所への提訴
 連邦控訴裁判所の判決
 米国最高裁判所への審理請求と、その結果
 カリフォルニア州裁判所の判決
 カリフォルニア州控訴裁判所への控訴と判決
 裁判への寄付金
 裁判費用の積算

第七章 裁判から得られたもの
 プロジェクトの検証
 裁判の費用について
 裁判から得られたもの
  @日本国民の覚睡と共感
   (国民の覚睡/有言実行/アメリカへの宗主国意識の解除/民間の機動力)
  A米国における慰安婦像の設置に対する抑止力
  B日本政府の政策転換
  C官民一体の意思表明
  Dアメリカ人へのインパクト
  E世界への影響
  FGAHTへの信頼

第八章 日本政府の慰安婦問題への対処
 二〇一五年の日韓合意
 日本政府の意見書の効果
 日本政府の意見書の内容
 日本政府の今後の対応

第九章 裁判を終えて
 アメリカに正義はあるのか
 この裁判で達成したこと
 今後の課題


巻末資料
 @「告訴状抄訳・二〇一四年二月二〇日」
 A「連邦第九巡回区控訴裁判所判決(抄訳)」
 B「日本政府による意見書(GAHTによる日本語訳)」