
ジローは生きる勇気を、愛する人たちとともに暮らせることの大切さを、わたしたちに教えてくれた
(西宮の家は、どっちのほうだろうか?)
ジローは、ぼんやりと考えました。なんだか、気が遠くなっていくようでした。
〈なにをしてるんだ、ジロー、歩くんだ!〉
そんな声がしたような気がしました。
ジローは、足をふんばって、立ちあがりました。よろよろと歩きました。石につまずいて、たおれました。
また起きあがり、足をひきずりながら進みました。
ジローは、この七十キロを、愛する人をもとめて、ひたすら帰るために、二年間もの年月をかけたのです。
あちこち、さまよい歩きました。おそらく、ジローが走り、そして歩きつづけた距離は、一千キロをはるかにこえるだろうと考えられます。
※本書は平成元年十二月に刊行した『帰ってきたジロー』と、平成十七年七月に刊行した『帰ってきたジローもうひとつの旅』を合本・改訂のうえ、新装したものです。






