いのちの花

ペットの殺処分0を願う女子高生たち

綾野 まさる 作  水沢 そら 画 2014.08.06 発行
ISBN 978-4-89295-981-3 C8293 A5上製 160ページ 定価 1430円(本体 1300円)
小学校中学年以上向き

日本図書館協会選定図書

生徒たちの思いは全国に広がっている。大人も涙する感動物語

いのちの花 ペットの殺処分0を願う女子高生たち

青森県動物愛護センターをたずねた女子生徒たちは、いたいけな犬たちが「殺されてゆく」ことに、大きな衝撃を受けました。

(生きるために生まれてきたのに、どうして人の手によって、いのちを奪われなくてはいけないのだろう)

みんなの胸に、ケージの中でふるえていた、犬たちの悲しげな瞳がよみがえりました。

殺処分された動物の骨が事業系廃棄物として処分されていることを知った女子生徒たちは、無念に死んでいった犬たちの骨を、ゴミではなく、せめて土に返してあげたい、そして美しい花を咲かせたい……そう考えたのでした。

「みなさん、犬の骨で花を育てるなんて、たぶん、ビックリされたと思います。でも、私たちは、骨を砕くという作業を、涙を流しながら行ないました。辛くて、悔しくてたまりませんでした。
でもいちばん苦しんだのは、処分されたペットたちです。
だから……、殺処分の現状を何とかつたえたいと思って、骨を砕きました」

この2年間で、配られた“いのちの花”は、1300鉢を超えました。
そのひとつ、ひとつに、死んでいった犬たちの“いのちのかけら”が、花となって、大切なことを伝えてくれます。

これは、殺処分ゼロを目指し、「いのちの花プロジェクト」と名付けた活動を始めた女子高校生たちの物語です。


いのちの花




目次

もう、この犬は、かわいくありません

17万匹……、そのいのちの重さ

こんな施設、いらないんです

じっちゃんとタマゴ焼き

人ぎらいの秘密

ドリーム・ボックス

大きな骨、小さな骨

やめろよ、呪われるぞ!

みんな、生きているんだ

どうして、犬たちが花になったの!?

大河の一滴

作文―いのちの花


動画 いのちの花


いのちの花  青森県立三本木農業高等学校 曽我美月

「いのちの花」――、この花は太陽に向かって伸び続けます。

904頭の果たすことのできなかった「もっと、生きたかった!」という思いを、つたえているかのように……。

ペットブームといわる現在、犬は私たちの生活に潤いと安らぎを与えてくれる大切な存在です。しかし、その陰で繰り返されている犬の殺処分、青森県では904頭に上り、大きな社会問題になっています。皆さんは、「殺処分ゼロ」という本をご存知ですか? この舞台になった熊本市では、無責任な飼い主の安易な引き取りを拒否し、処分数を劇的に減らしています。

命と真剣に向き合い、奮闘する職員に大きな感銘を受け、「私も高校生として命と向き合いたい!」そう考えるようになりました。そこで、私が所属する愛玩動物研究室では、「殺処分ゼロ社会の実現」というテーマで研究を始めました。

活動のヒントを求めて処分場のある県動物愛護センターを見学しました。処分室にはモニターがあり、犬が死んでいく姿を職員が見守るそうです。奥には処分された骨の袋が沢山積まれていました。

犬の骨を見せながら、「こんな施設、無駄なんです。」と、涙を浮かべておっしゃっていました。殺処分された犬は、事業系廃棄物つまり「ゴミ」として処分され、土に還ることさえできない現実に大きなショックを受けました。

そこで、考えついたのが「いのちの花プロジェクト」。処分された犬の骨を土に入れて花を育てる活動です。もっと長く生きたかったという犬達の思いを、花に命を与えることで、遂げてほしいと考えました。また、命の尊さを伝える教材として、花壇や鉢花を作ることで、多くの方々にメッセージを伝えたいと考えました。

すぐに、愛護センターから骨を頂きました。骨を砕く作業を、涙を流しながら行いました。辛くて、悔しくてたまらない気持ちでした。しかし、一番苦しんだのは処分された犬達で、殺処分の現状を何とか伝えたいと思い、骨を砕きました。

次に、マリーゴールドとサルビアの播種を行い、1週間後、新しい命が顔を出しました。そして、1か月後ようやく花が咲き誇ってくれたのです。この花を見ていると、彼らが生き返ったようで、本当に嬉しい気持ちになりました。

そこで、この花をどのように感じてもらえるかを知るため、私達が主催した「十和田わんわんフェスタ」で配布しました。花に込めた私達の思いを伝えると、自然に大粒の涙が溢れてきました。

会場は静まり返り、あちこちですすり泣く声が聞こえてきます。その後、花を求める行列ができ、新しい飼い主の元へ旅立つことができたのです。「犬と同じように大切に育てるからね。」と言って花を持ち帰る方など、殺処分の現状を伝えることで、飼い主の心に大きな変化が表れたのです。

手ごたえを感じた私達は、積極的に普及活動を行いました。題して、「命の花メッセージ」。まず、本校来場者へのメッセージとして、「いのち」と花で飾った命の花壇とプランターを設置しました。また、県民全体へのメッセージを伝えるため、県動物愛護センター主催の動物ふれあいフェスティバルで、「いのちの花」を配布しました。

さらに、今年の5月にも配布依頼がありました。子供たちへのメッセージが伝わりやすいように、ひまわりの種と骨の粉をバルーンアートにつけて配布したほか、命の花の鉢上げを体験して頂きました。

そして、現在公開されている「ひまわりと子犬の7日間」。これは、犬の殺処分がテーマの映画です。そこで、映画館で花の配布をお願いしたところ、青森市アムゼでの花の配布とポスターを掲示して頂きました。映画とともに命の尊さを伝えることができました。

私達の活動は、新聞記事にも掲載して頂き、県民にもメッセージを伝えることができました。この記事が様々なブログで紹介され、コメントは数百を超え、日本全国から注目を集めました。

昨年10月、東京都に住む任田さんから嬉しいプレゼントが贈られきました。インターネットで見つけた新聞記事を頼りに、お手紙とクロッカスの球根を贈ってくれました。

「優しい手に抱かれることなく、散っていった尊い命に、手を差しのべて下さって、本当にありがとうございます。心から感謝し、活動を陰ながら応援したいと思います。活動が理解され、一日も早く命の花が奇跡の花へと変わりますことを切に願います。」

この言葉は、私の心の支えになっています。

私は、一人の農業高校生として、農業を通じて殺処分の現状を地域に伝えてきました。殺処分ゼロ社会の実現には、地域の方々と一緒に考え、一緒に作りあげていくことが何よりも大切なのです。私たちの元を旅立った「いのちの花」は、そのことをずっと伝えてくれていることでしょう。

青森県、そして日本の「殺処分ゼロ社会」が実現する日まで、「いのちの花」は私達のそばで、今日も元気に花を咲かせています。




 

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