ウイグルを支配する新疆生産建設兵団

東トルキスタン秘史

ムカイダイス 著 2023.11.10 発行
ISBN 978-4-8024-0160-9 C0030 四六並製 288ページ 定価 1760円(本体 1600円)

新疆生産建設兵団とは何か?
兵団はジェノサイドの実行役。
軍隊・政治・行政・企業が一体の組織。
共産党中央政府の指揮下で、ウイグルを巨大な監獄にし、
職業訓練所と称して、ウイグル人を奴隷として酷使している。
生産物を収奪、世界に流通させる準軍事組織である。

「はじめに」より抜粋

ウイグルを支配する新疆生産建設兵団

新疆生産建設兵団は一九五四年に設立された「軍」「政」「党」「企業」一体の特殊な組織です。設立当時は「中国人民解放軍新疆軍区生産建設兵団」と呼ばれていましたが、一九八一年に鄧小平による「兵団は解放軍の名称を表に出さない方が良い」との指示で「新疆生産建設兵団」に変わりました。

兵団は軍と同じ構造であり、現在十四の師団と百八十五の団を所有します。所属する人員は三百四十八万五千百人に及んでいます。ウイグルの各地に配置され、師が市を、団が町や農場を併せ持つ「師市合一・団鎮合一」制度を用いています。新疆石河子市、新疆アラル市などの多くの市は兵団所属です。ウイグル自治区の管轄を受けない治外法権であり、「国の中の国」と呼ばれています。設立当初からウイグルへ入植させる大量の漢族の受け皿として、また中国共産党中央軍事委員会と並ぶウイグル経済支配の両輪の一つとしての役割を果たしてきました。かつてのイギリス東インド会社やオランダ西インド会社にも例えられます。

現在の兵団は四千五百以上の会社を所有し、世界七十カ国の八十六万二千社以上と貿易を行い、ウクライナやケイマン諸島などで土地を、アメリカ、日本などで資産を持つ巨大軍産複合組織です。二〇二一年のGDPが日本円でおよそ七兆円です。同時に兵団は「中華民族共同体」のために、テュルク系であるウイグル人を強制収容所に入れて「中華民族」に改造する、ウイグルジェノサイドの政策実行役も担ってきました。このような「業績」が評価され、兵団武警の総隊参謀長が共産党香港駐留部隊のトップに起用されたことから、専門家は中国当局は香港民主派への弾圧を強化する狙いがあると懸念しています。

この「新疆生産建設兵団」こそ、ウイグルを取り巻く諸問題を理解する大きなキーワードの一つです。新疆生産建設兵団の設立時期と役割、そして新疆ウイグル自治区との関係を明らかにすることは、今のウイグルで起きていること、その歴史的背景、そして私たちの、世界の今後に密接に関わると私は考えてきました。

そのため、「新疆生産建設兵団」を本書のメインテーマとさせていただきました。

目次

はじめに
 前著への反響
 ウイグルジェノサイドと国際社会
 ウイグルを支配する新疆生産建設兵団

第一章 新疆生産建設兵団とは何か
 新疆生産建設兵団とウイグルの資源
 兵団の概要
 「計画単列」としての兵団
 「建築工程師」第十一師
 「師市合一」の現在
 兵団の構造と機構について
 兵団が「軍」として保たれる理由
 入植した漢民族の受け皿になっている
 国境地域の管理を担う
 「民族自治区域」内における治外法権
 主権と治権の問題
 「軍企業」の製品が世界市場で売られている
 兵団によるウイグルの環境破壊

第二章 新疆生産建設兵団の設立
 禁じられた「東トルキスタン」
 毛沢東は何故新疆生産建設兵団を設立したか?
 ウイグルへの進駐を託された将軍・王震
 兵団は何故自治区より一年早く設立されたのか
 毛沢東と共産党が恐れた「和平解放を妨げる諸要素」
 東トルキスタン民族軍
 東トルキスタン民族軍の運命は

第三章 毛沢東の「和平解放」
 毛沢東の戦略
 東トルキスタン共和国の「民主革命党」
 鄧力群の新疆における「巧みな外交と情報戦術」
 ソ連を味方につけ、その力を最大限に利用する

第四章 運命を変えた「飛行機事故」
 東トルキスタン共和国リーダーたちの「飛行機事故」
 リーダーたちはなぜ「北京」に向かったのか?
 アフメットジャン・カスミーたちのアルマトイにおける足取りと行先
 中国共産党による事故日時の修正
 「飛行機事故」についての新たな証言
 一九四九年八月二十五日の飛行機事故調査報告書について
 「飛行機事故」が民の心に残したもの

第五章 謎の男「ブルハン・シェヒディ」
 二十世紀のウイグル史上最も謎めいた人物
 ブルハン・シェヒディの「和平解放」における「功績」
 「共産党による賛美」と「タタール人社会からの批判」
 シャトグリ・ウイグル暗殺事件
 アフメットジャン・カスミーとブルハンは長年の「親友」だった
 アフメットジャンからブルハンへの最後の手紙

第六章 進むウイグル切り崩し工作
 「五十一人派座談会」とは何か
 「五十一人派座談会」が開かれた背景
 毛沢東の消えた「連合政府論」
 アブドレヒム・エイサの死
 国民党の「新疆省」において実現に至らなかったこと
 共産党の「民族区域自治」政策
 ウイグル人側から見た「新疆省」と「民族区域自治」

第七章 文革時代の兵団解消と復活
 「文化大革命」時代と新疆生産建設兵団の解消
 メリケ・ズヤウドンの死
 鄧小平と新疆生産建設兵団の回復

第八章 習近平とウイグルジェノサイド
 作られた「ウイグル人によるテロ」
 習近平の「新疆政策」と「民族政策」
 兵団を南に発展させるという習近平の野望
 「兵地融合」はどのようにして実施されるのか?
 兵団を南に発展させる政策の真の目的とは
 「一帯一路」の出入り口がウイグル
 「一帯一路」の現状と問題点
 一帯一路で重要な役割を果たす兵団
 ウイグル強制・奴隷労働
 日本はウイグルジェノサイドの実行役である中国の軍事企業と貿易をしている

おわりに
 「歴史」と「現実」から見える中国の本当の狙い
 当事者同士が真摯に向き合える機会を作ってくださった方々への謝辞

解説:小林一美(神奈川大学名誉教授)
参考文献



「おわりに」より抜粋

習近平率いる中国共産党政権の、ウイグル人ジェノサイドを通して達成しようとする目的は、ウイグル人から住み慣れた故郷を奪い、漢民族を大量に入植させて人口逆転を実現し、ウイグルの内部に兵団の十四個の師団と三百八十万人を配置した「安全島」を作り、国境線には国防軍を置くことで、最終的に新疆ウイグル自治区を生産建設兵団が呑み込もうとするものです。

中国共産党がウイグルジェノサイドを実施し、三百万以上の人々を強制収用して「中華民族」に改造する背景には、中国共産党を侵略者と認識するウイグル人をはじめとする東トルキスタンの民衆に対する恐怖があります。ウイグルは中国全領土の六分の一を占める大きな自治区であり、周りの国々とは人種、言語、文化、宗教で繋がっています。ウイグルが独立して周りの国々と連盟でも作り、世界約二十億のイスラームテュルク世界の一部になることを、イデオロギーと文化が全く異なる人口約十三億の中国は恐れています。万里の長城内にまた戻ることにでもなれば、十三億の民を養えなくなる、という悪夢が中国を待っているからです。

一帯一路をはじめとする各経済回廊は、中国のエネルギー需要を満たし、十三億人を養う生命線です。つまり中国の存続に関わる重要な戦略です。ウイグルジェノサイドの裏にある中国の本当の狙いは、ウイグルを消し去り、共産党に忠実で均質な中華民族共同体を作ることによって、党自身が「生き残る」ことであると言えるでしょう。

恐怖からくる「生き残る」ための戦略が、ウイグルジェノサイドに繋がりました。子供たちが親から離され、言葉を奪われました。大人は強制収用され、今は大勢が監獄にいます。たくさんの人々が死に、生き残った者は強制労働で「改造」されています。女性には強制不妊手術が施され、中国人が組んだレイプツアーの対象になりました。

中国共産党はこのような「人道に対する罪」を犯し、私たちの心に深い傷を負わせ、憎しみの種を植え付けました。修復できるとは思えません。ウイグルがこれで終わるとは、私たちウイグル人は思っていません。中国共産党が成功するとも思っていません。

「中国共産党政権が行っているこの残酷極まりのない犯罪・ジェノサイドは、かえって私たちを強くする」

これが今のウイグル人の心境です。


 

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