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蕎麦つゆ江戸の味


老舗の元主人が教える「江戸の味」の極意


コミック「そばもん」監修者で有楽町「更級」4代目である著者が、
自らの経験と豊富な知識をもとにまとめた「江戸の味」の極意。
現在の料理界における「つゆ」の位置づけなどのウンチクから、
「つゆ」づくりの基本といった企業秘密まで暴露している。
そば好きもそうでない人も、一度読んだらそばが食べたくなること請け合い。


藤村和夫 著 1992.07.29 発行  

ISBN 4-938564-98-X C0277 A5上製・210頁・定価 3738円(本体 3398円)

 

第1章 日本「つゆ」事情 より

蕎麦つゆ江戸の味…「そばもん」監修者で有楽町「更級」4代目である著者が、自らの経験と豊富な知識をもとにまとめた「江戸の味」の極意

 

■「つゆ」の方を大切にする江戸の蕎麦店
江戸の蕎麦店の主人は、蕎麦よりむしろ汁の方を大切にする伝統がある。 その理由は、蕎麦の方は、年に一度収穫され、それを、次の出来秋まで使い延ばさねばならない。昔は夏新、秋新と三カ月から半歳は良い蕎麦粉が手に入った。しかし、梅雨期を越したヒネの品質の低下は防ぎようがなかったのである。
また、蕎麦粉自体、挽き方により色、口当たりの差はつけられるものの、製麺技術である「木鉢」では、老舗同士では技術が接近し過ぎ、蕎麦での特色は出しにくかった。

その点、蕎麦つゆは、特色が出しやすかったし、通年、同じ味が作り出せ、しかも一子相伝として、「のれん」の伝統として継承させることが出来たからである。

蕎麦屋の老舗では、職人は「やどや」、現在の人材派遣業の元祖ともいえる口入屋から雇っていた。出前持ちの「外番」、調理係の「中台」、蕎麦を茹でる「釜前」、蕎麦を製麺する「板前」、また、職人でなくともサービス係、今でいう客席係の「端番(はなばん)」は女性専門の「桂庵」からと、営業に必要な人員はほとんどこれで賄うが、大切な「汁取り」だけは、主人の仕事で、これを雇い職人にまかせる店にロクな店はないことになっているのである。

たとえ、主人が直接手を出さぬまでも、倅が子飼いの職人、番頭にやらせ、味見の儀式は欠かさない。


■江戸の味文化を継承する蕎麦つゆ
世の中が太平になると、生活に余裕が出来て、人々は周囲を見回し、より豊かなものを求めるようになるのは、何時の時代でもかわらない。
生活が豊かになると、人々は本物、おいしいものを追い求める。果ては、それを製造することを自分の職業にまでしてしまう風潮も生まれる。
現在、蕎麦においても、そうした熱心な新参者によって開業された蕎麦店が数多くみることができる。そうした店舗では、蕎麦は実においしい。しかし、汁はいまひとつしっくりしないところがほとんどである。

しかしそれは決して材料が悪いわけではない。工夫が足りないわけでもない。
同じ材料、原価でもっとおいしいものが出来るのに、残念なことである理由は、気の毒ながら、その店に伝統がないからなのである。

それも、現代になお江戸料理の伝統があれば、個々の店にそれがなくとも、ある低度の蕎麦つゆが出来たであろうが、それは、殆ど断絶してしまっているために、蕎麦つゆをこしらえようと努力しても、その手段が的外れであるためでもある。

おいしい蕎麦に合った「つゆ」をこしらえるには、江戸の味の伝統を把握することが欠かせないのである。それは、日本の味の文化を継承していなければ不可能であるのだともいえる。


 

目 次

 


1章 日本の「つゆ」事情

  ・蕎麦も大切、「つゆ」も大切
    「つゆ」と「たれ」
    「つゆ」が蕎麦の味を左右する
    つゆの方を大切にする江戸の蕎麦店
    江戸の味文化を継承する蕎麦つゆ

  ・醤油と日本人
    世界に普及する醤油
    日本で醤油使用が停滞する理由
    醤油を使いこなせなくなった日本人
    すき焼きは残った
    日本人はなぜ肉に醤油をかけ始めたか

  ・「だし」のうま味の構成
    うま味の主成分
    上方料理のうま味成分
    江戸料理のうま味成分
    昆布だしに出番を減らされた濃口醤油
    醤油の復活


2章 「江戸の味」への道

  ・蕎麦つゆの地位
    蕎麦の誕生
    蕎麦店の出現
    菓子のように甘かった江戸の味
    蕎麦つゆは“黒子”に徹す

  ・醤油以前
    時間を要した蕎麦の普及
    蕎麦のルーツ「索餅」の調味料
    味噌に頼った日本の調味料
    液体調味料のチャンピオン
    ハッキリしない味醂の使用開始時期

  ・蕎麦つゆの成立
    『蕎麦全書』にみる蕎麦つゆ
    蕎麦つゆに味醂が加わる
    江戸の味、成立の条件

  ・醤油の成立
    醤油のルーツ―醤(ひしお)
    醤油消費の拡大
    醤油誠造に小麦が使用される
    下り醤油の減少
    大衆に浸透した醤油

  ・かつお節の成立
    鰹節製造史
    『日本書紀』にも記録される「鰹」
    製造技術の革新・伝播
    こうして「カビ」利用が始まった
    東西で異なる「カビ」嗜好
    各地の鰹節主力商品
    江戸の鰹節、誕生の経過
    江戸にみる鰹節使用の移りかわり

  ・味噌の普及
    消費量が増え続ける唯一の食品
    鉄砲と味醂の共通性!?
    味醂は調味料ではなく「酒」
    「蒸留器」の改良・普及
    日本の蒸留器
    味醂の普及

  ・砂糖の普及
    砂糖の輸入
    砂糖の量目・価格
    幕府による砂糖の輸入制限
    国産砂糖の急増
    学者も警告する江戸市民の砂糖好き

  ・江戸の味の確立
    上方人も認める江戸の味
    飲食店の誕生
    江戸の味の確立期
    庶民文化の台頭と蕎麦つゆ


3章「蕎麦つゆ」づくりの基本

  ・だしの引き方
    「だし」が江戸の味を左右する
    「吸い物だし」と「煮物だし」
    料理の基本は「だし」の吟味にあり

  ・かつお節
    「鰹節」は鰹だけにあらず
    「鰹節」にも種類多々あり
    「仕上節」と「荒節」の違い
    「雄節」と「雌節」
    原料の鰹は旬より早めのものがよい

  ・かつお節の削り方
    鰹節が削られ始めたのはいつか
    カンナの使用
    現代の削り方
    「はな」の厚さによる使用上の差

  ・「はな」の投入量
    文献にみる「はな」の投入量
    「張り込み」と「だし取り」の相違
    現在の蕎麦店での投入量は

  ・煮詰めと火加減
    詰め時間と蒸発率
    長時間煮沸を続けるのには理由がある

  ・「はな」の厚さと煮沸時間
    「はな」を厚くし、長時間煮沸するのはなぜか
    職人の腕により異なる出汁濃度

  ・出汁の濃度
    手持ち屈折計のデータから
    蕎麦の出汁の適切濃度は

  ・出汁の煮詰め方
    火加減と「はな」の厚さ・長さ
    煮沸の容器の選び方

  ・詰めた出汁
    出汁が主役を食ってはならぬ
    出汁と料理の適性
    出汁の地位

  ・吸う汁と絡む汁
    蕎麦店の戦略
    江戸の出汁はなぜ濃いか

  ・出汁の詰め加減
    「だしが帰る」
    詰め時間による出汁の濃度測定

  ・アクの話
    黒褐色のアクと白いアク
    水質によるアクの溶出

  ・出汁のうま味を左右するイノシン酸
    塩分を加えるとわかるイノシン酸の有無
    イノシン酸含有量の差はこうして生ずる
    醤油と出汁によって構成される江戸の味

  ・「かえし」というもの
    「かえし」の種類
    「かえし」の保存
    「寝かし」の効果
    科学変化をみる
    砂糖の分量
    「かえし」への味醂の添加
    味醂の糖度
    水の添加
    加熱限度
    使用材料の種類

  ・合わせ方とバランスの取り方
    江戸のしきたり
    微調整の必要性

  ・味のバランスの資格化
    辛汁座標の見方
    全体のバランス

  ・微調整の基本
    出汁、醤油、砂糖の働き、干渉を理解する
    微調整のコツ


4章 江戸の味の「復活」

  ・蕎麦つゆの哲学
    蕎麦汁はいかにあるべきか
    蕎麦汁はいかにこしらえるべきか
    味はいかにして決定されるか
    味の構成には法則がある
    江戸料理が衰退した理由

  ・実例と解説
    実例1 並木薮
    実例2 室町砂場
    実例3 有楽町更科
    参考例1 江戸時代
    参考例2 一般店


あとがきと雑録

   

 

 

著者紹介

 藤村和夫(ふじむら かずお) 

 

1930年、東京都生まれ。「有楽町・更科」4代目。蕎麦の技術や歴史に造詣が深く、軽妙な語り口と文体には定評と人気。蕎麦職人のご意見番的な存在で麺業界に貢献。第1回そば文化大賞受賞。2011年永眠。
著書に、 『だしの本』 『蕎麦つゆ江戸の味』 『麺類杜氏職必携』 『改訂版・そば屋の旦那衆むかし語り』 『図解・旨い! 手打ちそばに挑戦!』 『図解・旨い! 手打ちうどんに挑戦!』 『蕎麦なぜなぜ草紙』 『蕎麦全書伝』 (以上ハート出版)、『蕎麦屋のしきたり』『江戸蕎麦通への道』(NHK出版)、『さらしなの暖簾に伝わる変わり蕎麦』(家の光協会)など多数。『そばもん―ニッポン蕎麦行脚』(ビックコミックス)の監修をつとめる。

 

読者の声

 

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