[復刻版]初等科音楽

文部省 著 塩入 清香 解説 2026.01.13 発行
ISBN 978-4-8024-0249-1 C0021 A5並製 176ページ 定価 1650円(本体 1500円)


『初等科音楽』について

復刻版 初等科音楽

本書は、戦時中に国民学校初等科三年から六年までで使用された音楽教科書全四冊を合本復刊したものである。

郷愁を誘う文部省唱歌のほか、この時期に新たに作られた唱歌も多数収録されている。

内容は、日本の四季や自然、児童の日常生活、勤労、偉人、神話、皇室に関するものに加え、戦時中の教科書であるため、戦意高揚を意図した歌も少なくない。

特筆すべきは、尋常小学校では制限されていた合唱や輪唱を、積極的に導入している点である。声を重ねて響き合わせることで、心を一つにする「和」の精神を養おうとしたことがうかがえる。

興味深いのは、『初等科国語』『初等科修身』など他教科の教科書で取り上げられた内容が、歌として本書にも登場している。国定教科書であったため、科目を横断した統一的教育が可能であったことがわかる。

終戦直後、この教科書はおよそ半数の歌が「軍国主義的」として墨で塗りつぶされた。

いま改めてそれらの歌を聴き、歌うことによって、戦後の日本人は、断絶してしまった戦前・戦中の日本の姿を実感できるであろう。


目次


初等科音楽一
君が代/勅語奉答/天長節/明治節/一月一日/紀元節/1.春の小川/2.鯉のぼり/3.天の岩屋/4.山の歌/5.田植/6.なはとび/7.子ども八百屋/8.軍犬利根/9.秋/10.稻刈/11.村祭/12.野菊/13.田道間守/14.潛水艦/15.餅つき/16.軍旗/17.手まり歌/18.雪合戰/19.梅の花/20.三勇士

初等科音楽二
1.春の海/2.作業の歌/3.若葉/4.機械/5.千早城/6.野口英世/7.水泳の歌/8.山田長政/9.青い空/10.船は帆船よ/11.靖國神社/12.村の鍛冶屋/13.ひよどり越/14.入營/15.グライダー/16.きたへる足/17.かぞへ歌/18.廣瀬中佐/19.少年戰車兵/20.無言のがいせん

初等科音楽三
昭憲皇太后御歌 金剛石・水は器//1.朝禮の歌/2.大八洲/3.忠靈塔/4.赤道越えて/5.麥刈/6.海/7.戰友/8.揚子江/9.大東亞/10.牧場の朝/11.聖徳太子/12.橘中佐/13.秋の歌/14.捕鯨船/15.特別攻撃隊/16.母の歌/17.冬景色/18.小楠公/19.白衣の勤め/20.桃山/練習題

初等科音楽四
明治天皇御製//1.敷島の/2.おぼろ月夜/3.姉/4.日本海海戦/5.晴れ間/6.四季の雨/7.われは海の子/8.滿洲のひろ野/9.肇國の歌/10.體練の歌/11.落下傘部隊/12.御民われ/13.渡り鳥/14.船出/15.鎌倉/16.少年産業戰士/17.スキー/18.水師營の会見/19.早春/20.日本刀/練習題

解説 塩入 清香

(君が代、勅語奉答、天長節、明治節、一月一日、紀元節は、底本各巻の冒頭に掲載されておりますが、本書では最初にまとめております)